佐藤純の賭博回遊業 勝負のしどころ、守るべきルール
一人の人間を更生出来たのか疑問も残るが、兎に角、生きる気力だけは出せたと思う。彼が今、どの様な生活をしているのか多少心配もある。千葉県の、日払いの有る会社に寮を借りて生活するので心配しないで下さいと話していたが・・・。
弟子が居なくなり、俺の日常に平穏が訪れたので、博打生活も平常運転に戻すとしよう。
今日は、新宿の常連店に向う。入金金額は少なめの10,000円 サービスポイントが付く最低入金額で勝負する。バカラを勝負する予定だが、この店に限らずインカジの店舗で賭ける場合、最低額の設定が4ドルに設定されている。
様子見で4ドルをバンカーに置く。結果を待つ間、サービスのタバコを貰いにカウンターへと移動する。店長がいたので世間話をし、セルフのウーロン茶を貰って席に戻った。結果は負けていた。
数ゲームをプレイしたが、俺の大嫌いなテンコ罫線で何時落ちるのか予想が立てられない。負けたら生活できなくなる程の金額を賭けているわけでは無いし、気持ち的には楽であるが、負けたくは無いのだ。9月に韓国に行く事を予定している俺にとって、今は旅費を用意する大切な期間なのである。
バカラの罫線は過去の結果に過ぎず、未来を予想する事は出来ない事は承知している。それでも、賭ける根拠が欲しいのだろう。少なくとも俺はそう思う。鉛筆を転がして出た目に賭けても良いのだが、過去を振り向いてしまう。それが人間の心の弱さだろう。
様子を見、行けるタイミングをただひたすら待つ。バンカーに3目が落ちた！此処で行くしか無い。『行ける時に怖がらず、行くことでしかバカラで勝つ事は出来ない』という、アングラカジノハウスで知り合った不動産会社の社長の声が思い出された。
あの時は、プレーヤーのツラが5目ほど続いていた時と記憶している。2000ドルの所持金から350ドルまで所持金を失い、帰ろうと思っていた時に言われた言葉だ。それを契機に、怖がりながらもプレーヤーに200ドルを賭け、10数目までプレーヤーのツラを取った初めての体験をさせて貰った。払い戻し金額は50万円近かったと記憶している。デポジットが20万円だったので、勝利してハウスから帰る事が出来た。30分程度の時間で、所持金が倍以上に成ったのだ。あの時はアドレナリンが出ている事を自覚した。
バンカーに50ドルを置き、確定させる。かつての出来事を回想し、自分の選択を信じ、結果を見守る。結果は勝利。以前なら50ドル程度の金額なんて緊張もしなかったし、機械的に賭けられる金額だった。しかし、今は違う。それが有れば、一日の食事が十分にカバー出来るのだからね。大金では無いが、貴重な資金であることには変わりないのだ。
無事に50ドルを回収した事で、心に余裕が出来た。毟り取れた50ドルを更にバンカーに注ぎ込む。結果がどの様に成ろうとも、己を信じバンカーに張った。天は、俺を生かそうとしているらしい。其のまま落ちてくれた。赤い丸が罫線に追加される。俺は、『赤字』と言う言葉が嫌いだが、この時ばかりは赤で埋め尽くされてしまえば良いのに、と心で唱えていた。矛盾しているが、私も人間なのだからご勘弁願いたい。
90ドルの勝利。赤で落ちている限り、それに乗るのが筋だろう。更に50ドルをバンカーに賭ける。プレーヤーが9点を叩き出したが、バンカーも9点でタイゲームに成った。救われた。強いときは何が出ても勝てるのだ。偶然だとは承知しているが、本当に不思議でならない。
引き分けの次は、逆に賭けると俺は決めている。どんなにツラが続いていようと、必ず逆に賭けるのだ。これまでの経験で、タイの後は反対に成る事が良く有ったので、その様に決めてしまった次第である。
自分の取り決めどおり、プレーヤーに10ドルを賭ける。今回は思惑が成功し、勝利を収めた。この後の罫線の動きは予想ができないので、ここで勝利を確定させる。そう、もう帰るのだ！
店長に終了を告げて清算依頼をすると、「もうお帰り？佐藤さん、最近ヤバイですよ！全然負けてないじゃない！」「店的には、遊んでくれた方が・・・」なんて話をされた。本音だろうな。ただ、店長の顔は笑顔だから問題ないだろう。俺の勝ち負けなんて、他の客が全て中和してくれているハズだからな。店側としては俺の勝利金なんて微々たる物だから関係ないのだ。
今回はこれで失礼させて貰う。
勝利の美酒に酔いながら眠ることにしよう。
この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ（カジノカフェ）を奨励するものではありません。
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そこらへんに居る普通のオヤジです。若い頃は、結構女性にも男性にもモテました。 （ゲイビデオのスカウトもされましたが、喫茶店に連れていかれて、飲み食いタダでさせて貰い、逃げました。）今では見向きもされない存在に成り下がりました。