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佐藤純の賭博回遊業 たまには病気も役に立つ

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昔、新宿の風鈴会館から区役所に向かって区役所通りを歩いて行くと、『×P×』というカジノハウスがあり、何度も入店させてもらっていた。その店のサービスでは、10万円チップを購入すると、1万円のチップをサービスで付けてもらえた。このチップはバカラ限定で、しかも細かくする事は出来ずに一発勝負に成る。これは負けても勝っても、勝負が終わると回収される。予想が当れば差し替えで現金チップが貰えるが、倍に成ることは無い。掛け金の下は20ドルからと比較的庶民的なハウスだった。ほとんどのハウスが30ドル~50ドルをミニマムとして設定していたので、それを考えるととても良心的だった。

何度目か忘れたが、最後に入場した時の勝負がとても印象的だったので触れておく。

その時の購入額は20万円で2000ドルの購入だった。サービスチップは、100ドルチップ2枚で200ドル。初戦は20ドルをプレーヤーに、引き分けに10ドルの合計30ドルを賭けた。結果はプレーヤー『9』、バンカーも『9』で引き分けに成り、本線20ドルと80ドルの配当、合計110ドルが戻された。

次の勝負ではサービスチップを使う事にした。引き分けの次は切りに行くと決めていたので、当然バンカーに100ドルを置く…..つもりだったのだが、間違えて引き分けに100ドルをおいてしまった。ノーモアベット、もう引き戻しは出来ない。勝負の流れを見守るしかない。勝負を見るのが怖くなってしまい、堪らずトイレに駆け込んでいた。今も昔も、ここ一番の勝負から目を背けてしまうのはご愛嬌ということにしておいてほしい。

佐藤純

トイレを済ませ、恐る恐る卓に戻る途中、黒服が珍しくおしぼりを提供してくれた。受け取る時に、ナイスです!と渡され、そのまま卓に座ると、なんと800ドルも増えていた。引き分けが来たのだ!

これに味を占めて、次の勝負でも引き分けに100ドルを置き張りにした。結果2連続で引き分けを引き、同席していた少し怖い顔の日本人のおじ様方から、代わる代わる「オメデトウ」とお祝いの言葉を頂いた。今ではそんなにびっくりするような金額ではないが、当時の俺にとって、2回連続の100ドルでの引き分け当選は、とてもデカかったし、とても嬉しかった。

その日、二度目の波が来たのは夜明け近くだった。責任者の「こちらのシューで本日最終です」という掛け声に、眠気でだるくなった体に活を入れた。オープンゲームから数ゲーム様子を見たところで、プレーヤーにツラが落ちてきた。最終ゲームなので少し冒険してやろうと、400ドルをプレーヤーに置く。すぐに黒服に声をかけ、落ちるまでプレーヤーに元金のみ置き張りをしてほしいと頼み、席を立つ。

今日は逃走癖で良い思いをしたので、その再現とばかりトイレに駆け込む。タバコを吹かし、頃合いを見て卓に戻ると1万ドルのチップの山が出来ていた!!大げさかもしれないが、当時の俺にしたら、このチップは山と呼んでも過言ではなかったのだ。

その日は110万円の現金が懐に入り、ほくほく顔で帰宅したのを記憶している。

欲を出して、翌日も行こうと考えていたが、風邪気味で体温がかなり上がってしまい、診察に行ったら肺炎と言われ、即入院。「せっかく波がきていたのに・・・」と考えて悔しかったが、仕方がない。おとなしく入院し、翌朝テレビのニュースを眺めていると、アナウンサーが何やら気になることを話している。「違法カジノ東京で摘発客ら、18名逮捕…」どうやらどこかのハウスで手入れがあったらしい。店内の内装が見た事ある内装だな?よくニュースを見ると・・・肺炎に救われた!

この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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