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佐藤純の賭博回遊業 独身貴族と人生の墓場

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歳のせいだろうか?ここ最近、急に目が見えにくく成ってきてしまった。若い頃の一年が今の半年の感覚なので、それだけ肉体の老化のスピードも加速しているのだろう。精神的には20代と変わらないのに、肉体年齢だけ歳をとってしまい、肉体と精神のバランスが崩れているように感じられる。

そういえば先日、知人と話す機会があったのだか、彼の身の上話を聞いて衝撃を受けた。話の中で一月の小遣いの話になったのだが、彼の給料は嫁が管理しているらしく、その中から4万円を支給されているらしい。その中から昼飯、煙草、通勤定期を購入しているらしく、少しの飲み代を捻出することさえ厳しくなってしまう有様とのことだった。

独り身の俺には到底受け入れられないだろう事柄であったが、ここは共感するべきだろうと判断して「大変な世の中だが、お互いなんとか生き延びようや」と声を掛けるのが俺にできる精一杯の慰め文句だった。

そんな話を聞いてしまったその夜、俺はベラジョンカジノにログインしていた。彼には同情するが、彼の選んだ選択であると言えるし、賭人として生きている俺には対岸の火事なのだ。彼の小遣いと同額近くの350ドルを送金して、カジノパリからバカラを開く。昼間の会話を思い出すと、なんだか罪悪感にさいなまれる俺が存在するのだが、すぐに振り払ってパソコンに集中する。

稼働中のテーブルの一覧と罫線を見ていると、バンカー5目からプレーヤーに反転2目のテーブルを発見した。すぐに入場し、プレーヤーのツラを張る。50ドルを置いて勝負の行方を見守っていると、バンカーはナチュラル9、プレーヤーは額縁のペアを作りやがった!サイドになんて張ってないし、完全敗北だ。おとなしくプレーヤーに落ちてくれれば良かったのに、反転するとはツイてない。

佐藤純

バンカーの流れに寄っていると考え、リカバリーのために100ドルを張ったのだが、プレーヤーに9のカード、バンカーに3のカードが配られた時点で俺は悟ってしまったよ。この流れだとプレーヤーに10カードがきて、バンカーには屑が配られて即死だとね。

バカラは引いてみなけりゃ分からないが、落ち目の時はひかなくても、大体流れが見えてきてしまうものなのだ。逆に調子が良い時も流れが見えてきてしまい、神掛かる事もありえる事なのだが、どうやら今回は前者のようだ。

先の予想通り、両サイドに10カードが見事に降臨!俺のチップはパソコンの中に吸い込まれてしまった。残高は200ドル丁度。たったの2ゲームで150ドルを失ってしまった。

冷静さを欠いた俺は残高すべてをバンカーに張り、トイレに急行。さっぱりした処でパソコンを覗いてみると・・・残高0の表示がむなしくされているではないか。確かに3連敗は良くあることだが、開始3分も経たずに全てを失ってしまい、少々へこんでしまった。

再入金をするためにキャッシャー画面を開いたところで、昼間の彼の発言が頭を過ぎる。彼にとっての一月を、俺は3分で消化してしまったのだ。少なからず思うところがあり、再戦は後日にしようと、そっとサイトを閉じた。

ブラックコーヒーを片手に、ため息一つ。ほんの少しだけ人生について考えさせられる一幕であった。

この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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